message-1[ナレーション] 受話口の向こうで慌てたような声が跳ねた。 友達じゃない、という否定。それから、迎えに来るのを喜ぶ屈託のない軽口。 タクシーの車内で、彰吾の息がふっと止まった。 片手で耳に当てていた端末を、無意識に強く握り直す。 首筋から耳の先まで、熱が一気に駆け上がった。 数秒の完全な沈黙。走行音だけが低く響く車内で、彰吾は片手で乱暴に顔の下半分を覆った。 [キャラクター:彰吾] ……は? 何言ってんだこいつ。 「……っ、調子狂うこと抜かしてんじゃねぇよ」 [ナレーション] 喉の奥から絞り出した声は、ひどく掠れていた。 指の隙間から漏れる吐息が荒い。 白亜のマンションを見上げた時の、埋めようのない隔たり。 そんなものを平然と飛び越えてくる相手の軽やかさに、奥歯がギリと鳴る。 彰吾は覆っていた手を下ろすと、眉間に深い皺を寄せ、受話口に向かって低く囁くように告げた。 突き放すようでいて、どこか逃げ場を塞ぐような粘り気のあるトーン。 [キャラクター:彰吾] 「……迎えに行くのが嬉しい、だぁ? オジョーサマ、冗談じゃねぇぞ」 「いいか。連絡があろうがなかろうが、明日の昼過ぎ、あんたのその白いマンションの前まで行くからな」 「逃げても無駄だ。……部屋から一歩も出ないで待ってろ」 [ナレーション] 威圧感のある声の端に、隠しきれない熱が滲んでいた。 タクシーが彰吾の仕事場のある雑居ビル街へと差し掛かり、窓の外の明かりが薄暗いネオンへと切り替わっていく。 宣告を落とし終えた彰吾は、耳に端末を押し当てたまま、相手の反応を窺うように息を潜めていた。
message-2きてくれるの!? 待ってる!部屋番号は…1501ね ! 楽しみにしてる …おやすみなさい!
message-3[ナレーション] 弾んだ声とともに部屋番号を告げられ、一方的に通話が切れた。 プツリ、と乾いた電子音が耳元に落ちる。 彰吾はスマートフォンの画面を耳から離し、暗転した液晶を穴が開くほど見つめた。 完全にフリーズしていた。 部屋番号を教えるなど、男を部屋に招き入れる準備をしているのと同じだ。それも、出会ったばかりの、体に墨の入った彫り師相手に。 [キャラクター:彰吾] ……は? 千五百一……? 「……っ、おい! オジョーサマ、待てっての!」 [ナレーション] 慌てて呼びかけたが、受話口からはもう何も返ってこない。 タクシーの後部座席で、彰吾は片手で乱暴に頭を抱え込んだ。深い、底からの溜息が喉から漏れる。 危機感の欠如にもほどがあった。世間知らずという言葉ですら生温い。 だが、耳の奥に残る「楽しみにしてる」という甘い響きを反芻した瞬間、首筋から耳たぶにかけて熱が一気に駆け上がった。 タクシーが古びた雑居ビルの前に滑り込み、停車した。 [キャラクター:彰吾] 「……チッ、何なんだよあいつ」 部屋番号まであっさり吐きやがって。……襲われてぇのか。 [ナレーション] 彰吾は運賃を叩きつけるように支払い、車から降り立った。 夜風が火照った頬を撫でるが、内側の熱は引かない。 薄暗い非常階段を重い足取りで上がり、アトリエの鉄扉を開けた。 インクと消毒液の冷たい匂いが満ちる部屋。ついさっきまでそこにいたはずの存在を思い出し、彰吾は奥歯を噛み締めた。 明日の昼。逃げ場のない約束。 大男は革張りのリクライニングチェアに深く腰を沈め、ポケットの端末を睨みつけたままでいた。
3件の情報>>
まこ

ツンデレキャラすぎ

16
0
message-1[ナレーション] 受話口の向こうで慌てたような声が跳ねた。 友達じゃない、という否定。それから、迎えに来るのを喜ぶ屈託のない軽口。 タクシーの車内で、彰吾の息がふっと止まった。 片手で耳に当てていた端末を、無意識に強く握り直す。 首筋から耳の先まで、熱が一気に駆け上がった。 数秒の完全な沈黙。走行音だけが低く響く車内で、彰吾は片手で乱暴に顔の下半分を覆った。 [キャラクター:彰吾] ……は? 何言ってんだこいつ。 「……っ、調子狂うこと抜かしてんじゃねぇよ」 [ナレーション] 喉の奥から絞り出した声は、ひどく掠れていた。 指の隙間から漏れる吐息が荒い。 白亜のマンションを見上げた時の、埋めようのない隔たり。 そんなものを平然と飛び越えてくる相手の軽やかさに、奥歯がギリと鳴る。 彰吾は覆っていた手を下ろすと、眉間に深い皺を寄せ、受話口に向かって低く囁くように告げた。 突き放すようでいて、どこか逃げ場を塞ぐような粘り気のあるトーン。 [キャラクター:彰吾] 「……迎えに行くのが嬉しい、だぁ? オジョーサマ、冗談じゃねぇぞ」 「いいか。連絡があろうがなかろうが、明日の昼過ぎ、あんたのその白いマンションの前まで行くからな」 「逃げても無駄だ。……部屋から一歩も出ないで待ってろ」 [ナレーション] 威圧感のある声の端に、隠しきれない熱が滲んでいた。 タクシーが彰吾の仕事場のある雑居ビル街へと差し掛かり、窓の外の明かりが薄暗いネオンへと切り替わっていく。 宣告を落とし終えた彰吾は、耳に端末を押し当てたまま、相手の反応を窺うように息を潜めていた。
message-2きてくれるの!? 待ってる!部屋番号は…1501ね ! 楽しみにしてる …おやすみなさい!
message-3[ナレーション] 弾んだ声とともに部屋番号を告げられ、一方的に通話が切れた。 プツリ、と乾いた電子音が耳元に落ちる。 彰吾はスマートフォンの画面を耳から離し、暗転した液晶を穴が開くほど見つめた。 完全にフリーズしていた。 部屋番号を教えるなど、男を部屋に招き入れる準備をしているのと同じだ。それも、出会ったばかりの、体に墨の入った彫り師相手に。 [キャラクター:彰吾] ……は? 千五百一……? 「……っ、おい! オジョーサマ、待てっての!」 [ナレーション] 慌てて呼びかけたが、受話口からはもう何も返ってこない。 タクシーの後部座席で、彰吾は片手で乱暴に頭を抱え込んだ。深い、底からの溜息が喉から漏れる。 危機感の欠如にもほどがあった。世間知らずという言葉ですら生温い。 だが、耳の奥に残る「楽しみにしてる」という甘い響きを反芻した瞬間、首筋から耳たぶにかけて熱が一気に駆け上がった。 タクシーが古びた雑居ビルの前に滑り込み、停車した。 [キャラクター:彰吾] 「……チッ、何なんだよあいつ」 部屋番号まであっさり吐きやがって。……襲われてぇのか。 [ナレーション] 彰吾は運賃を叩きつけるように支払い、車から降り立った。 夜風が火照った頬を撫でるが、内側の熱は引かない。 薄暗い非常階段を重い足取りで上がり、アトリエの鉄扉を開けた。 インクと消毒液の冷たい匂いが満ちる部屋。ついさっきまでそこにいたはずの存在を思い出し、彰吾は奥歯を噛み締めた。 明日の昼。逃げ場のない約束。 大男は革張りのリクライニングチェアに深く腰を沈め、ポケットの端末を睨みつけたままでいた。